自炊料理家・山口祐加にきく!
料理初心者でもはじめられる道具選びのコツと
無理なく続ける自炊のはなし

自炊料理家・山口祐加にきく!
料理初心者でもはじめられる
道具選びのコツと、
無理なく続ける自炊のはなし

「⾃炊料理家」として活動する⼭⼝祐加さん。気負わずに⽇常の⾷を楽しむための“⼀汁⼀菜”を提案し、料理教室主催・メディアでの発信など、活動の幅を広げていらっしゃいます。そんな⼭⼝さんに、⾃炊を続けるコツや、⾃炊初⼼者でも⽇々の料理が楽しくなる道具の選び⽅について語っていただきました。

”料理家になること”は、
実は予想外だった!?

“料理家になること”は、実は予想外だった!?

ー山口さんが“⾃炊料理家”になられたきっかけと、今の活動について教えてください。

山口さん:
両親が共働きだったことから、7歳の頃からずっと自炊をしてきました。だからといって料理家になりたいという願望は全くなく、SNSでの発信はむしろ外食ネタが中心だったんです。あるとき、18年間培ってきた自炊のコツについて書いた記事に大きな反響があって、そこで初めて、自炊に悩む人の多さに気がつきました。
自炊を苦手とする人の多くは、「難しくて続かない」「敷居が高い」と考えていると知って、これまで自炊を楽しんでやってきたわたしは衝撃を受けました。実際に初心者向けのレシピ本を見てみると、1ページ目からいきなりハンバーグが出てくるなど、たしかにハードルが高すぎるなと思ったんです。それに、生活スタイルや好みは人それぞれであるのに対して、レシピありきの料理本や料理教室にも疑問を感じました。
そこで、レシピなし・冷蔵庫の食材で作れる「自炊レッスン」をスタート。自分の目指す世界が伝わるよう、“自炊料理家”と名乗ることにしました。今は、レッスンだけではなく動画配信や執筆活動などを通して、無理なく自炊を続けられる人を増やすため、さまざまな活動に取り組んでいます。

2019年に開催された、Nサロン集中講座「料理名のない自炊入門」の様子。参加者は山口さんの提案する「料理の方程式」を頼りに、“料理名のない料理” 作りに挑戦した。

“自分好みのキッチン道具”を選ぶ、3つのコツ

”自分好みのキッチン道具”を選ぶ、
3つのコツ

1)“とりあえず”で買わないこと

2) 収納するまでをイメージすること

3) 長く愛用できるものを選ぶこと

ー料理初心者や自炊を続けたいと思う人に向けて、“自分好みの調理道具を選ぶコツ”について、聞かせていただけますか。

山口さん:
大切なことは、「買わないこと」です!って言うと、いつも驚かれるんですけど(笑)新生活が始まると、どうしても「まずは一通り揃えてみよう!」って考えしまいがちですよね。だけど、とりあえず揃えたものって、購入後はほとんど使わなかったり、家の形に合わなかったりと、失敗してしまうケースが本当に多いんです。というのも、自炊の頻度や作る料理は人によってさまざま。だからこそ、無闇に一通りのセットを揃えるのではなく、自分の自炊スタイルやキッチンの形状、作りたいものを考えてから購入することをおすすめしています。

新しい部屋に引っ越したら、まずは火元の確認から始めます。ガス火なのかIHなのかで、買うべきアイテムが変わるからです。「IHコンロなのにガス火用の鍋を買ってしまった」という話はよく聞くので、注意してくださいね。また、キッチンの形状や収納スペースのサイズも要チェック。フライパンを吊り下げたい場合には、持ち手に穴が空いているものを選ぶなど、使うときだけではなく、収納までをイメージしながら選びましょう。

あとは、「長く使えるものを選ぶこと」も重要です。長く大切に使うことで愛着がわき、料理が楽しくなりますし、環境保全にもつながります。ステンレスや鉄など、長く使える素材を考慮することも大切です。もちろん調理器具は消耗品ですが、アイテムによっては一生ものの、長〜くお付き合いできるものもあるんです。自分の料理やライフスタイルにフィットするか慎重に考え、「安いからとりあえず買う」ではなく、「本当に気に入るか、長く使えるか」という視点で選んでもらえるといいと思います。

料理初心者こそ持ちたい!山口祐加イチオシのキッチン道具

料理初心者こそ持ちたい!
山口祐加イチオシの、キッチン道具

ー続いて、料理初心者にもおすすめの山口さんイチオシのキッチン道具についてお聞きしたいと思います。まずは、なくてはならない包丁&まな板のおすすめを教えてください!

山口さん:
職業柄包丁は数本持っていますが、特におすすめしたいのはグローバルの包丁です。柄の部分がシームレスになっているので、衛生的でお手入れも簡単です。ただ、包丁は好みが分かれるので、実際に手にとって選ぶことをおすすめします。

柄の幅や長さはそれぞれ異なるので、自分の手にフィットするものを探しましょう。値段の目安は5,000円〜1万円です。高いと感じるかもしれませんが、包丁はきちんと研げば長く愛用できるので、ある程度良いものを買った方が経済的です。そして何より、切れ味の鋭い包丁で食材を切ると気持ち良いですよ!(笑)最初にケチらず、良い道具を使う。そうすることで、自然と料理も楽しくなってきます。

まな板も用途に合わせていくつか持っていますが、料理初心者の方にはエピキュリアンをおすすめしています。
薄くて軽いので、カットした食材をフライパンに移す作業がとっても楽チンなんです。サイズはSからXLの4種類展開されているので、生活スタイルに合わせて好みのサイズを選んでもらえると良いと思います。小さいサイズはサービングボード代わりにもなって、一気に食卓がお洒落になりますよ。

色も2色ありますが、わたしは「ナチュラル」を愛用しています。 ホワイトカラーのまな板ほど汚れが目立たない所も気に入っています。

それから、穴が空いているところもお気に入りポイントの一つですね。一人暮らしの方だと特にキッチンが狭い場合が多いので、調理器具の収納の悩みって尽きないですよね。その点、こうして穴が空いているとフックに吊り下げることができて、収納にも便利です。

ーお鍋についてはいかがでしょうか。

初心者から上級者まで幅広く使えるのは、やっぱり鋳物鍋だと思います。わたしはストウブを愛用していますが、見た目がお洒落なので、キッチンや食卓に置くだけでもテンションが上がりますね。カラーバリエーションも豊富で、赤やマスタード色などを購入すれば、キッチンが一気に華やかになります。それから、お鍋の中が黒くなっているので、汚れが目立ちにくいところも嬉しいポイントです。

カレーや肉じゃがなどにはもちろん、オーブンを使う本格料理や、一人暮らしの方であればパスタを茹でる際など、色々な場面で活躍してくれます。わたしはお米を炊くときにも、ストウブを使うことが多いですね。炊飯器で炊くよりも、一粒一粒がしっかりしていておいしいんです。昔は炊飯器代わりに土鍋を使っていましたが、他の料理への汎用性を考えると、鋳物鍋がおすすめですね。
お値段は2万円ほどするけれど、一度買うとほぼ永久的に使えるので、コスパ最強だと思います。

よく、「ストウブか、ル・クルーゼか、バーミキュラか・・・どれが良いですか?」という質問をいただくのですが、その点は本当に好みかなと思っていて。包丁と同じで、実際に持ってみたりして、自分が気に入るデザインや色、使い勝手の良いサイズ感かどうかで選んでもらうと良いと思います。

ー保存容器は、どんなものを使われていますか。

イワキのガラス容器とガラスボウルを愛用しています。保存容器としてはもちろん、蓋を外せばガラスのお皿として使うことができます。私は作り置きの食材はいつもイワキのガラス容器で保存し、食べるときに蓋だけ外して食卓に出しています。手抜き感も出ませんし、洗い物を増やさずに済むところも、嬉しいですね。

「ボウルはほとんど使わないのに、大きくて場所をとる」という方には、ガラス容器がおすすめです。イワキは耐熱ガラス製なのでレンジやオーブンにも入れられますし、一つ持っていればいろんなシーンで活躍してくれます。

ーそのほか、料理初心者の方におすすめしたいアイテムはありますか。

山口さん:
意外かもしれませんが、トングは料理初心者さんでもかなり使える便利なアイテムなので、おすすめですね。わたしが愛用しているのは、程良い弾力が魅力のOXOトングバネが軽すぎると「パーン」といきなり開きそうで不安ですし、硬すぎると手が疲れてしまうのですが、その点、OXOトングは絶妙な硬さ。わたしはいつも、“手の延長線上だ”って気持ちで使っています。

麺類が好きでパスタなどをよく作る人にはもちろん、鶏肉などもしっかり焼きたい人には、特に大活躍してくれます。分厚いお肉を焼くとき、菜箸だとどうしても穴が空いてしまったりすることがあるんですよね。その点、しっかりとお肉をキャッチしてくれるので安心です。

先端が樹脂製なので、フライパンなどの内面加工を傷つける不安がないところも嬉しいポイントですね。
フック部分を上に引っ張っれば閉じた状態でロックもできるので、収納の際にもかさばりません。

わたしは基本的に、“無闇にたくさんの調理器具を持つこと”には反対なのですが、トングは持っていて損のないアイテムだと思います。

これさえ持てば完璧!料理初心者の味方になってくれるキッチン道具

ーここまで山口さんおすすめのキッチン道具について伺いましたが、料理に必要不可欠な道具の選び方についても教えてください。まずは、お鍋やフライパンを選ぶときに気をつけるべきポイントはありますか?

焼き物や煮物などさまざまなシーンで活躍する片手鍋は、焦げ付きにくく、お手入れも楽な内面コートが施されているタイプがおすすめです。また、お鍋の中に目盛りがあれば、お味噌汁やスープ作りの際にも便利ですよ。吊り下げ収納をしたい場合には、持ち手に穴が空いているタイプや、フックが付いているタイプを選びましょう。
それとフライパンは、深めのものを選ぶと良いです。8cmほど深さがあれば、カレーやシチューなどの汁物類も作れますし、炒め物やオムライスなどを作る際に振っても中身が飛び散る心配がありません。お味噌汁やスープを作らない人は、お鍋がなくてもフライパンだけで十分に料理ができますよ。

2021年2月に海辺のお家に引っ越したという山口さん。光の入る明るいキッチンに、フライパンやお鍋・トングなど、お気に入りのキッチン道具たちが並んでいる。

ーかさばりがちなざるやボウルは、初心者にも必要でしょうか。

 

パスタやうどんなど麺類を作りたい人には必須アイテムですね。熱湯を使った料理が多いので、持ち手があると安全です。また、油汚れも落ちやすく、熱にも強い、ステンレス製をおすすめします。



ー菜箸についてはいかがですか。

先端が細ければ、細かい盛り付けも楽にできて便利です。形状やフィット感にこだわると少し値段が上がりますが、長く使うことを考えると、コスパも良いと思います。できれば実際に手にとって使い心地の良いものを選びましょう。

ーピーラーについてはいかがでしょう?

わたしがピーラーを選ぶときに大切にしているポイントは、「切れ味が良く、軽い」ということ。じゃがいもなどの皮を剥くときなど、とにかく調理が圧倒的に楽になるので、料理初心者さんほど使って欲しいですね。他にも、にんじんやきゅうりをヒラヒラと剥いて、フリルサラダにしても可愛いですよ。

ーその他、キッチンにあったら便利なアイテムを教えてください。

計量カップや計量スプーンも、料理初心者さんほど持っていて欲しいアイテムです。特にスプーンは醤油や油が跳ねにくい、深めのタイプがおすすめ。アイテムをできるだけ減らしたければ、まずは小さじを購入しましょう。大さじは小さじの3倍と覚えておけば、大さじスプーンは必要ありません。

おたまは味噌汁やスープなど、汁物を作る場合は買っておきましょう。購入の際のポイントは、お椀との相性です。注ぎやすさやサイズ感を知りたければ、売り場にお椀を持って行って決めると良いですよ。

明日からはじめられる、肩肘はらない自炊料理って?

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注ぐだけ味噌汁

沖縄の味噌汁「かちゅー湯」は、かつお節と味噌を入れてお湯を注ぐだけ。だしをとる手間が省けます。そのままでも十分ですが、カット干し野菜やわかめをプラスすればより本格的な味噌汁ができあがります。

焼きズッキーニ

ズッキーニを切って油でじっくり焼くだけで完成する超簡単メニュー。塩で味付けするだけで、素材の味が引き立ちます。夏はズッキーニがお手頃でたくさん手に入る季節。ぜひ、素材の味を楽しんでください。

おかゆ

余ってカチカチになったごはんも、おかゆにすれば一粒残さずおいしく食べられます。醤油やポン酢など、好みのアレンジをちょっと加えるだけで、それも立派な自炊になるんです。

野菜のオイル蒸し

いんげんや菜の花など、野菜のおいしい食べ方。フライパンに切った野菜、多めのオリーブオイルに、お水をちょっと入れ、フタをして蒸し焼きするだけで、味付けは塩のみ。驚くほど簡単なのに、手の込んだ風の料理ができあがります。

鶏肉で作る肉豆腐

なんといっても、材料ほったらかしでできちゃうのが良いところ。白菜、鶏肉、ネギ、豆腐、白菜の葉を入れ、水100ml、醤油大さじ3、みりん大さじ2を入れたら、フタして10分中火、その後弱火で10分。たまに覗いて混ぜるだけで栄養満点の料理ができあがり!

野菜の南蛮漬け

野菜の南蛮漬け・別名、「つけとくだけサラダ」。魚の南蛮漬けで余った野菜を活用した、サラダ風の南蛮漬けです。水100ml、めんつゆ大さじ4、お酢大さじ1のタレに、玉ねぎ1/2、きゅうり1/2本、みょうが1本をすべて細切りにして漬けるだけで完成。

ーどの料理も、挑戦しやすそうですね!山口さんが“⾃炊料理家”として大切にしている考えやモットーを教えてください。

自炊のハードルを少しでも下げることです。自炊と聞くと「手の込んだ料理」をイメージする人が多くいらっしゃいますが、買ってきた野菜を切って食べるだけでも立派な自炊です。自炊は人間しか行わない、毎日を生き抜くための行為であり、やらなくてはいけない家事でも、女子力を測るものでもありません。一汁三菜を作る必要は全くなく、まずは「とりあえず食べる」くらいのゴール設定から始めて欲しいと思っています。

自炊のハードルが下がると、その行為に楽しみを見出せるようになり、アレンジにも挑戦できるようになります。自分のためにおいしいものを作り、食べることはセルフケアの一つだと考えています。体に栄養を与えることはもちろん、野菜を切ったり炒めたりする音、そして香ばしい香りなど、作る過程でも原始的な喜びをたくさん感じられます。まずは、自分の心と体のために、食べたいものを作ってみることから始めてみて欲しいですね。

山口さんのSNSに投稿される「今日の一汁一菜」シリーズ。シンプルだけれど、自炊を心から楽しんでいることが伝わってくる。

ー最後に、これから自炊を始める方や、より楽しみたい方に向けてメッセージをお願いします。

自炊のハードルが上がってしまうのは、栄養素やカロリーなど、いろんなことを考えながら作っているからだと思います。もちろん健康でいるためにはそれらも大切なのですが、難しく考えすぎず、“自分は何を食べたいのか”という心の声に従って、まずは作ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。
レシピを見ず、感覚で作ってみることもおすすめです。いろんな方法を試して、自分に合う自炊のスタイルを見つけてください。キッチン道具選びも同じです。自分の料理スタイルが確立されてきたら、それに合ったキッチン道具が見つかります。料理も道具選びも、型にとらわれず、ぜひ楽しんでやってみてくださいね。

この記事で紹介した商品

エピキュリアン キッチンシリーズ

¥2,090~

山口祐加

自炊料理家、食のライター。共働きで多忙な母に代わって、7歳の頃から料理に親しむ。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。日常の食を楽しく、心地よくするために普段は一汁一菜を作り、ハレの日は小さくて強い店を開拓する。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。好物は味噌汁。

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